フライ散文詩。日常の唄。

日々に感じたことを自由詩で記録します。

気がつくと。

 

そこはパリだった。公園にいた。

わたしはまた眠りこけた。

 

 

気がつくと、景色は変わっていた。

ブリュッセルの片隅にいた。

黒猫が目の前にいた。わたしが見つめるとどこかへ行ってしまった。

 

わたしは再び眠りに落ちた。

 

気がつくと、わたしは氷上にいた。遥か前に犬ゾリが走っていた。声は聞こえなかった。どうやら南極のようだ。隣にロシア人らしき男性が居た。話しかけた。

 

わたしは誰でしょうか。ロシア人に聞いた。

ロシア人の口が開いた瞬間、とてつもない眠気がわたしを襲われ、わたしは眠りに落ちた。

 

 

次はなかなか目覚めなかった。

 

 

大分寝ていたようだ。

気がつくと炬燵の中にいた。自分の手に皺が刻まれていた。焦ってそばにあった鏡を見た。

髪が真っ白だった。

 

何歳なんだ。

背後に妻らしきおばあさんが台所で味噌汁らしきものを作っていた。

 

 

おい、わたしは何歳なんだ?

 

あなた、何言ってるの?大丈夫?

おばあさんが振り返ったその瞬間、顔を見れぬまま、わたしはとてつもない眠気に誘われ再び目を閉じた。

 

今度はすぐに目が覚めた。

 

なんだか騒がしい。小さな子がわたしを覗き込んでいた。びっくりした。

わたしは飛び起きた。起き上がったとたん、足がもつれた。

身体が思うように動かない。足が短い。

…小さい子になっている。

ねぇ、ちーちゃん、だいじょうぶ??

ちーちゃん?

確かに、千尋。俺は千尋だ。

 

いきなり目の前の景色が消え、ビジョンは晴れて行った。

わたしはテュイルリー公園のベンチに腰掛けていた。

 

目が覚めた。そうだ。わたしはパリにいたはずだった。

 

いや、パリの前にどこかにいたはずだ。どこだろうか。いやいなかったのかもしれない。

今のリアルな場所の遷移はなんだったのか。

 

わからないまま、穏やかな陽光の中。ふたたびテュイルリーのベンチで眠りに落ちていった。